学会設立の趣旨
本学会は、タービュラントで不確実な環境下で企業の存続・成長を実現してゆく上で有効な「戦略経営」――Strategic Management――というフロンティアの開拓を目指して構想されたものであり、Dynamic, Strategic & Synthetic を旗印としています。 ここ十数年来のダイナミックな環境変化の中で「選択と集中」戦略の必要性が叫ばれ、多少の成果が見られ始めたものの、僅かな例外を除いて日本企業の苦戦は続き、ジャパン・パッシングの趨勢はむしろ加速しています。その直接的原因は日本企業における「戦略経営」の欠如にありますが、それがいかなるものかを、またその具体的な処方箋を示せなかったわれわれ研究者や学会にも責任の一端があると考えられます。 「戦略経営」とは、環境変化への適応ないし先取りのために適切な経営戦略を選択(ないし転換)するだけでなく、それに合わせて組織、人材開発、研究開発、マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、生産・流通、法務等々の各ファンクショナル分野においても適切な戦略を選択し、それらを総合的に展開することによって企業の存続・成長を実現してゆく経営を意味します。これは今日のように不確実性の高い環境ではことに重要性が高く、先の「選択と集中」戦略にしても、撤退、M&A などによるビジネスの組み替えが実際に好業績をもたらすためには、そのような総合的な戦略展開が不可欠になっています。 しかし残念ながら、「戦略経営」を研究対象とする学会は日本には存在せず、strategic management を標榜する海外の学会でも「諸ファンクショナル分野の総合(synthesis)」の視点が弱く、体系的な「戦略経営」論の展開はなされていません。本学会は、まさにそのような新領域の確立と、それによる日本企業の再生への貢献を目標にするものであり、“Dynamic Corporate Strategy と‘Strategic’Functional Strategies を Synthesize することにより、タービュラントな環境下での企業の存続・成長を可能にする Strategic Management ”の確立にチャレンジするものに他なりません。 そのような目的の達成に向けて、利用可能な諸理論を動員して現実の諸問題を多面的、総合的に分析して処方箋を提示するという、より実践性的な活動と、それを踏まえて(あるいはそれに先だって)“新しい戦略経営理論”の構築を試みるという、より理論的側面の強い活動を共に行っていきます。そしてまた本学会は、それらの活動を、大学教員・研究者と、現実の動向や実務に通じたコンサルタント、コンサルティング会社、ローファーム、シンクタンク、監査法人、および企業の経営企画、マーケティング、財務、人材開発その他の部門のプロフェッショナルとのコラボレーションによって推進することを目指しています。
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